16 エスカレーター利用を巡っての宗教論争をなくしてくれ

朝の通勤時間帯。
都会の駅では必ず見られる『エスカレーター2列の法則』。

「歩かない派」が片方の列に整然と並び、もう片方の列を「歩く派」に譲る構図。
おそらく自然とその隊列に行き着いたのだと思うが、日本人特有の「合理的発想力」と「空気読解力」から生まれた文化であろう。さすが日本人。

しかし、それはさておき、ここ何年か前から、
「エスカレーターは歩かないで止まって乗ってください」
という運動が広まっている。理由は簡単で「歩くと危ない」からだという。
この記事を書いている現在は、一部の駅でエスカレーターの壁などに張り紙を貼ったり、駅員が拡声機で喚いたりしている光景が見られる。
また、その運動を時折ニュース番組が取り上げて、国民に呼びかけてもいる。

筆者も個人的には、その考えに賛成である。
老若男女が利用し、特に密集した中で歩くのは非常に危険だと感じている。歩きたい奴は階段を歩けと。

ただ、ここで深刻な問題がある。
その運動、働きかけ、呼びかけをしていることを知らない国民がまだまだたくさんいることである。

試してみるとすぐわかる。いま仮にエスカレーターで歩く側の列を塞ぐ形で乗ってみよう。
さっそく後ろから我が物顔で上がってきた人に「ちぇっ！」と舌打ちされたり、「片側に寄れ馬鹿野郎。空気読めねえ奴だな」などとキレられてしまうのがオチである。
要は「歩かない派は歩く派に道を譲るのが正義」だと未だ信じて疑わない国民がたくさんはびこっている。

働きかけが中途半端のために、国民たちの価値観が二分されてしまって宗教論争的に混乱してしまっているのが現状。

当の筆者もこの宗教論争に巻き込まれてしまっエピソードを持つ。
事の次第はこうである。
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通勤中のエスカレーターで、張紙
「歩かずに２列に並んでください」
が貼ってあるにも関わらず、歩かない派はみんな片側に寄って肩身の狭い思いをしていた。
そこで私は一番槍のごとく堂々と歩く側の列を塞ぐように乗った。後続は我に続け、という意志を込めて。
・・・すると、案の定、ほどなくして後ろから我が物顔でガンガン靴音を立てておじさんが上がってきた。禿げ上がった額が時折照明に反射してキラキラ光っている。
そして、私の真後ろに達するなり、予想どおり「ちぇっ！」と私の耳へ大きな舌打ちを食らわせてきた。決して投げキッスではない。
私は「時はきた！」とばかりに、おじさんと一戦を交えるべく、般若の形相で後ろを振り返った。
すると、どうだろう。そのおじさんの後ろには続々と歩く派が押し寄せてきていた。皆一様に苛立った表情で目をギラつかせている。援軍の襲来である。敵方は既に臨戦態勢が整っている。
これは多勢に無勢だと瞬時に諦めた私は、歩かない派の列に墜ち延びようとしたが、ぎっちり詰まっているため割り込めない。
よって筆者に残された退路としては、歩く派の列しかなく、そこを駆け上っていくしかなかった。
まさに負け戦の殿（しんがり）と化した筆者は背後から追われる身となり、一心不乱に駆け上がるしかなかった。
それは傍から見れば、私が「歩く派の筆頭」という構図となった。

・・・そのときである。歩かない派の列にいた幼児らしき女の子が、筆者が追い抜きざまにこう呟いたのである。
「ママあ、エスカレーターを歩いて乗るのって駄目なんだよね？」
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・・・いわゆる、中間管理職あるあるの「上から叩かれ、下からも突かれ」ってやつである。涙

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